“New York City, 3”
Piet Mondrian
Thyssen Museum @ ティッセン美術館
Mondrian grew up in a strict Protestant home in the Netherlands and received Protestant education. He draws a work that would represent John Calvin 's teachings. In his work, three primary colors of red, blue and yellow line up on a white ground, and the black grid divides them severely. There is no shadow nor cloudiness where to conceal any sin. It seems to be claiming that "I am innocent." アルプスの向こうスイスからライン川を下ってカルヴァンの思想がオランダにやってきた。16世紀中ごろだ。 勤勉で、蓄財の際に長けていた彼らを肯定してくれる宗教が現れ、すぐにカソリックからカルヴァン派に改宗した。 カルヴァンの思想は強烈でファナティックだ。 聖書に書いてあることだけが正しく、それ以外は認めない。 罪を犯した者はどんなに悔い改めようと救われない。 彼の思想は大きくこの二つだ。
マリア信仰も教皇も偶像崇拝も聖書に書かれていないからNG. 罪を犯さないように、酒もタバコや一切の娯楽はご法度。 だから働くし、金もどんどん溜まってくる。これをカルヴァンは善しとした。民間救済である。これでオランダ人は飛びついた。オランダでは、カルヴァン派のことをゴイセン、フランスではユグノー、イギリスではピューリタンと言い、後アメリカにわたって合衆国を作る。
奇妙な一致がある。産業革命を起こし資本主義の幕をあけたのも彼らカルヴァン派の国々。国王を倒して市民革命を成し遂げたのも彼らだ。教皇の威光をかさにきた国王をあさっり否定できたからだ。 しかしアーティストにとっては最初受難だった。 なんせ偶像崇拝禁止だから、キリストや聖人の絵や彫刻の注文がばったり途絶えた。 そればかりか教会に既にあった美術品を打ち壊したりゴミとして捨てられた。かろうじてその難を逃れて一箇所に集められたのが美術館の始まりだ。 だから我々は廃品かゴミを有難く鑑賞しているわけだ。
しかし画家達のパトロンは教会から富裕な市民へと直ぐに変っていった。彼らは金があるのだ。テーマも静物画、風景画、そしてフェルメールのように日常生活を捉えた作品のジャンルが誕生する。日常生活の肯定こそがカルヴァンの教義に叶う。
一方、旧教カソリックの教えを頑なに守りぬいた南のイタリア、スペイン、ポルトガルは、宗教改革に脅威を感じ、巻き返しを図る。発見されたばかりのアメリカ大陸から送られてくる大量の金銀を湯水のように使い、反宗教改革のプロパンダをド派手にぶち上げた。 これがバロック美術だ。 このハリウッド映画まがいのおどろおどろしく明暗や動きを強調し、渦巻きのように天に伸びていく構図は民衆の度肝を抜かせ、あるものは慄き、または随喜の涙を流し、地にひれ伏す。彼らには最後の審判を告げるラッパが高々と鳴り響くのが聞こえたに違いない。「神を畏れよ、悔い改めて浄財を寄進せよ!」 愚かなことだ。
さらに時代は下って20世紀、オランダの厳格なプロテスタントの家で育ちその教育も受けたモンドリアンもこのカルヴァンの申し子のような作品を描く。赤、青、黄も三原色が整然と白地の上に並び、それを黒のグリッドが厳然と仕切る。どこにも罪を隠すような影も曇りもない。 「私は潔白です。」と申し立てているかのようだ。