top of page

サイトスペシフィック

「散華」

サルッツオ宮殿 トリノ 2012

イタリアのトリノから帰ってきた。5年越しのプロジェクトが実現の運びとなり、今回はカタログ用の写真撮影のための作品設置だ。建てられて約300年のバロック様式のサルッツオ宮殿の一室にインスタレーションをする。と言うよりは、現場の環境、歴史を踏まえての現地制作も含まれるのでサイトペシフィック・アートといったほうが良いだろう。

ここのアートディレクターのエンリコはもともとトリノでギャラリーをやっていて、私も6年ほど前に個展をやらせてもらった。 その後、アートを流通させていくことに疑問を感じギャラリーをたたみ、彼のパートナーの家族がこの宮殿を買ったのを機にそこのアートディレクターとして色々なイベントを仕掛けている。http://www.palazzosaluzzopaesana.it/ita/home.html 今回は宮殿のメインになる4部屋を使い4人のアーティストが各部屋にその部屋に因んだ作品を作る。展覧会は9月14日からになる。

私に与えられたのは「FLOWER ROOM」でイタリアのバロック美術を代表する作家バルトロメオ・グイドボーノの花がテーマのフレスコ画が約10メートルの高さにある天井に描かれている。

トリノ入りしてから作品製作、作品設置、写真撮影までの10日間、私専用に広いアトリエとスタッフが付けられ、すぐ近くにアパートを借りてくれた。朝5時から夜の2時ころまで制作の没頭できたのも彼らの優れた企画力とバックアップがあればこそだ。

製作中、ディレクターや私や彼のアート関係の友人もちょくちょくアトリエに顔を出してくれコーヒーやワインに誘ってくれる。仲間との熱い夕食のあとバルを渡り歩いたあとも一人アトリエに戻り制作が続いた。

現場近くのバルやカフェを飲み歩き、ここに住む人たちとの交流はこういったサイトペシフィックな展示には必要だ。その現場でそれにかかわっている人たちとのコミュニケーションを通じて立ち上がってくる躍動感を作品に盛り込んでいく。それがサイトスペシフィック・アートの醍醐味だろう。ディレクターとワインを飲む間にも作品の制作進行状況のほかアートに関する意見の交換が絶え間なく行われそれも作品にリアルタイムに反映されていく。

一致したのは、今求められているのは、気に入らなければ他の流行に変えればよいような流通性に関わってくる作品を作るのではなくなく、その現場に関わっている人と競合し合っての創造活動だ。それがもともと洋の東西に関わらず存在していたアートの形だ。それはまさに私が長崎で2年ごとに企画している興福寺現代美術展でも感じていた。コレクターは創造活動に関わってこない。

最終日、約600個の「銀華」を完成させ皆が見守る中作品をくみ上げていった。http://www.neoheadtorino.blogspot.it/2012/06/toshiro-yamaguchi-arte.html 

そのとき確かにバロック音楽が聞こえた気がする。

2012年 6月6日 マドリッド  山口敏郎

Tags:

Featured Posts
Recent Posts
Archive
Search By Tags
Follow Us
  • Facebook Basic Square
  • Twitter Basic Square
  • Google+ Basic Square
bottom of page