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"The knight of the gold chain"


Tintorreto Prado Museum @ プラド美術館 This portrait by the Venetian master supposes a tense dialogue between the artist and the model, interested in capturing his expression and personality, and forgetting the details as much as possible.

ラド美術館では4年間の間、多くの名作の模写をさせてもらった。2枚目に選んだのがこのティントレットの作品だ。およそ色彩豊かなベネチア派の作品とは思えない位、ほとんど黒地のバックに顔と手だけが浮かび上がり貴族の威厳がある容貌を際立たせている。しかし黒と見えたのは、実は無限のグラデーションを持つ茶褐色の壮大なオーケストレーションだった。 その微妙な色の変化を見定めるために、イーゼルを許容範囲ぎりぎりのところまで作品に近づけた。さらに有難いことに同美術館のほとんどの作品にはガラスが嵌っておらず、実際の色がありありと鼻先寸前に見ることが出来た。

ここまで書いてとんでもないことを思い出した。 大変なことをしてしまったのだ。パレット上で茶褐色の絵の具をパレットナイフで混ぜている際に、ナイフの先が跳ねて、絵の具を名画の上に飛ばしたのだ。これは絵を描いたことがある人なら経験があるはずだ。 幸いなことに、絵の具が極微量だったのと、絵の具も巨匠と同じ顔料と油で練った自家製を使っていること、絵の具がやはり茶褐色の部分に着地したことで、物凄く注意深く見ないと識別は出来ない。多分何十年後の洗浄修復の時には気づくかも知れない。 とにかく私はティントレットの作品に「加筆」したのだ。

考えてみれば、もしその気になれば、模写する画家はパレット・ナイフで名作を切り裂くことも出来るのだ。そのために模写の許可を受けるには先ず大使館の身元保証書を提出しなければならない。それにしても、私がしたような完全に安全とはいえない状況で模写を許してくれるスペインの度量はすごい。

文化とは未来へ受け継がれる為に使用されて良いのであって、大事にしまって置く為ではないという考えが反映されている。

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