"Seated Man" Paul Cézanne
Paul Cézanne
Thyssen Museum @ ティッセン美術館 “What I wanted was to make of Impressionism something solid and durable, like the art of museums.” His "unfinished" has opened the door of twentieth century art.
セザンヌ最晩年の作品がここに収蔵されてある。 印象派のはかなさを古典の堅牢さに着地させようという不可能に近い考えに取り付かれてしまった男の物語だ。 モデルは背景の中に分解され、連続する色の染みになっていく。 形は色で、色は形であるとすれば、その色が刻々と変化しているのだから形も定まるはずも無い。 作品は必然として未完成で終わるしかない。 精神は究極まで引き裂かれ、もはや負けると分かっている勝負を死の直前まで続ける。 この狂気はある意味でゴッホを越える。かつてセザンヌがゴッホに言った。「君は狂人のふりをしているだけだ。」 しかしこの「未完成」であること自体がその後の20世紀のアートのドアを開けた。 つまり描いている時間にこそが描かれている対象が存在しているという「時間」=「存在」の関係を暗示してくれたのだ。彼の存在意義は計り知れない。