"Portrait of George Dyer in a Mirror"
Francis Bacon
Thyssen Museum @ ティッセン美術館
A true artist who did nothing except what he liked.
He died of a heart attack on 28 April 1992 in Madrid
今日は久々の定期健診で採血に近くの診療センターに行った。
注射針が薄い皮膚に入り、血が抜かれていく様を見て、突如フランシス・ベーコンの絵が脳裏を横切った。キリスト教美術には血なまぐさいシーンに溢れ返っているが、どこか演劇の舞台装置を見ている感じがする。ベーコンの絵には血は描かれていないにも関わらず激しく痛みを感じる。歯科医院で歯を削るマシーンの音が聞こえてきそうだ。
1992年、バルセロナでオリンピックが開催された年、フランシス・ベーコンはマドリッドで客死した。表向きはプラド美術館で開かれる彼の個展の打ち合わせが名目だったが、実は医者の忠告を無視し、恋人のホセに会いに来たのだった。20世紀最高の画家のマドリッドでの死に、スペイン中にショックが走った。享年83歳。
彼はギャンブルとアルコールと男遍歴で生涯を貫いた。人生そのものがギャンブルだった。彼は持っているものを全てぶち込んでの勝負に全てを賭ける。その瞬間こそが人生。ゼロか100か、だ。けち臭いことは真っ平だ。飼い慣らされた犬で生きるより、山で獲物を探す手負いのヘラジカになれ。
生来の育ちのいい趣味や知識がでロンドンの裏社会で名を上げる。
「俺が死んだら遺灰をプラスチックの袋に詰めて捨ててくれ。葬式なんてご免だ。俺の遺産は俺が愛したロンドンのバーのウエイターにくれてやれ。彼だけが俺にお世辞を言わなかった。」
好きなこと以外はやらなかった真のアーティスト。フランシス・ベーコン。