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ベラスケスへの眼差し


物の持つ象徴性を剥ぎ取り、客観的に網膜に映る色をキャンバスに移していく絵画革命はティツィアーノに始まり、エル・グレコを経てベラスケスによって完成された。それはヨーロッパ芸術の新しい考え方の最初の発露でもあった。

ベラスケスの絵が表象するものは、クラシックとモダンの中間点に位置し、古典的表現と、今日の我々になじんでいる空間の定義が同時に存在する。表現は最終的にそれを妨げてきた関係から解き放たれ、本来の純粋な形で描かれるようになる。

つまり彼は立体化された物に色を塗って行くという二元的手法をやめ、網膜に映る色をキャンバスに捉えようとしたのだ。

自分の目の前に深さとともに重なっていく幾重もの色の層を掠め取る手法、つまり”スキャンニング”したのである。

スキャンニングされ、キャンバスの上に重層的におかれた色がもう一度見るものの網膜上で結ばれ映像化される。

その考えはチューブ入りの絵の具の出現によって後押しされた印象派によって受け継がれたかに見えた。

だが彼らは色を並列的に置くことによって視覚効果を出そうとしたが重層的に色を置くことはしなかった、というより出来なかった。

チューブ絵の具の限界なのである。

今回の「スキャンニング・シリーズ」はベラスケスの表現手法を出発点にして印象派の色彩原理を並列的から重層的に置き換える試みである。

目の前にみるもの全てを視覚的真実として平等観をもって捉える時、存在そのものが、存続そのものを欲するように、キャンバスの上に永遠化していくことを願って。

               2015年 6月 マドリッド 山口敏郎

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