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SEEDS展に寄せて


最近色々な国に行き、他文化、他言語のアーティストとの交流が増え、私(山口)自身スペインに長く住んでいながらも、同じラテン民族である隣のフランスやイタリアでも自分の表そうとしていることが言葉においても作品においても違って伝わっているのが感じられてきた。

作品に関してはそれを展示する場所が違っただけでも与える印象が変わってくる。

ましてや自分では自分だけのオリジナルな作品と思っていても、その独創性が伝わっているとは限らない。

他とのコミュニケーションの場を持たず、情報の海に埋没している状態であればなおさらグローバリゼーションの流れに知らず知らずに飲み込まれ新味のない、謂わば自分のオリジナリティーという経験が織り込まれていない、コンベンショナルな分かりやすい言語を上手に駆使しているだけの作品になっていく危険がある。

その独創性、あるいは個性は人と人とのコミュニケーションによって生まれる。

つまり自分の経験が語られ、人の経験とは違うということがはっきりと確認されていく過程で、「個」としての自分が自覚される。

その自分の経験を他人に伝えるには、共通した言語を通して始めて伝わっていく。

但しここでいう経験とは単に何時どこでどうしたかといった出来事の羅列ではなく、それを通して受けた感覚全般を指す。自分が特定の場所、特定の時間に見た“空の色”はそれを見た自分だけの一回きりの体験であるが、その時の受けた印象を他人に伝える場合の感覚の質のことをさす。

相手に自分の経験が伝わっていくにつれ、自分だけの経験が相手の経験の部分と共有されることにより、少しずつ普遍性を帯びてくるようになる。

住んでいる場所、文化が違えば当然、その度合いが当然大きくなっていく。

今回のこの展覧会「SEEDS」もそういった意味で、スペイン、フランス、イタリア, オーストリア、韓国、日本という6つの場所、文化の違った環境で制作する3人のアーティストが自分の経験がその場所だけにしか伝わらないのではなくさらに広い範囲で伝わって行くことを確認することを目的に企画した。

一人ひとりが「種」でありその「種」は温室でしか通用しない「種」、あるいは蒔かれない「種」ではなくどの場所にも飛んでいき、蒔かれて根を張って豊穣な花を咲かせさらに新しい「種」を生んでいく「種」でなければならない。

またそれぞれが自分の地にもよそからの「種」を受け入れる「苗床」も持っていることである。こうすることによりお互いが恒常的に交配を続けていくことができる。

それが本当のネットワーク作りではないかと考えている。

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