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HINA


人形というと華豪勢な金箔張りの屏風の前に内裏の人形を並べた華やかなイメージを思い浮かべる。

しかしこれは時代が下ってのことで、もともとは雛人形は「災厄よけ」の「守り雛」として祀られ、一生の災厄をこの人形に身代りさせるという祭礼的意味合があったそうである。

また男女一対の内裏雛は中国の陰陽説の影響があるということである。

この2つのモチーフから私は今回の雛人形のアプローチを試みた。

先ず装飾的な要素を出来るだけ剥ぎ取り、シンプルに誰が見ても雛人形に隠されてい(託されている)このメッセージをヴィジュアル化すること。

もともと私は絵画が専門であるが、最近あるきっかけで陶芸に触れることがあり、立体ということに興味をもつとともに、平面と立体とのボーダーラインの所在に興味をもつに到った。

私の絵画はどちらかというと絵の具を何層も重ね、一見すると立体のようであり、潜在的に立体のへ志向があったことは否めない。

また最近は作品の展示も白いギャラリーを離れ、古い寺院や夢空間はしまやの様に蔵を改造したスペースで展示する機会が増え、その場でのキャンバスに描いた作品の存在価値を問い直していた。

古来日本には壁に絵を掛けるという習慣がなく、美の在り処は襖絵、天井画、欄間、掛け軸といった日本建築と渾然一体と溶け合っていた。

この雛人形も例外ではなく、三月の節句に取り出して並べ、それが終わると片付けるという風に、時期と場所が必然性を持った「もの」である。

美術という眼鏡で「もの」を見てしまうとそこに秘められたメタな認識が薄れてしまう。

制作にあたって、現在生活、制作しているスペインで手に入る樹脂粘土を使うことにした。 可塑性があり自然乾燥でかなりの硬度が得られ、着色も容易である。

しかしこの雛人形の制作にあたっては、形を作ってから着色する彫刻的手法をやめ、粘土自体に着色しながら塑像していく方法を取った。

これは日ごろ考えている、「ボディーを持った絵」を試みたかったからである。

「ボディーを持った絵」とはキャンバスや板の表面にイメージを作るのではなく、支持体自体が作品として意識される作品という意味である。

その支持体が四角であるのは単に、製造が安易、持ち運びが簡便、収納のよさ、近現代建築の壁に収まりやすいという思考の経済化であろう(建築が四角であるのも同様)。

作る方も見る側も自分が想像していたものと実際目にしているものとのギャップが大きいほど、生命の振動も大きく振れ、それが創造への端緒となると信じている。

HINA(直訳では"女の子")はポリネシアの神話では様々の女神と女性の名前で、伝説によると、トリックスターかつ文化的英雄であるマウイにはHINAという名前の妻がいて、それは神であるタネとタンガロアを指しているという。またHINAは多くの場合月と関連付けられる。

2011年12月 マドリッド 山口敏郎

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