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鏡-山口 敏郎の絵


山口 敏郎の作品は、三つの層から成立している。

表層は大地を連想させる淡い土の色や草の色-そこに古釘で彫り削ったような線が引かれ、中層の黒が現れ、空の器や車のついた家、雨の降った残像や飛行機などの形態が描き出されている。 表層にはまた刺し傷のような或いは微小なクレーターのような穴が形態とは無関係にいくつかあいていて貸そうの原色が露出している。

この多層の項増から私は複合的なイメージを触発される。 宇宙の静寂を容れる器・無限の闇の中の神の脈拍・太陽の祭典・子供の頃の夢想・消えてしまった記憶の火花・生と死の融合。

私は山口の作品の前に立つと、時々思い出す映画のセリフがある。 タルコフスキーが1972年に撮影したソ連映画‘惑星ソラリス’の中で、未来の宇宙科学者が苦悩をこめて語る言葉。 -私たちが宇宙の感覚を失ったのは秘密をなくしたからだ。 私たちに必要なのは鏡だ。-

宇宙から切り離されて閉じこめられた自己に、宇宙を映しだし、その感覚を甦らせてくれる鏡、そのようなものとして山口の絵は今私の前にある。

磯良 卓司

ギャラリー銀座汲美 代表

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